すらすら書けるエントリーシート、のウソ

5年前、こんな名前の講座を某広島大学で開催したので、自戒を込めて書く。

 

エントリーシート、特に自己PR(紹介)を「すらすら」書くのは正直、難しい。日頃からいっぱい文章を書いている&キャリアコンサルタント&人にエラそうに指導することを仕事にしている私だが、自分のこととなるとやっぱり頭を抱えてしまう。

 

それはなぜか。書くにあたって、題材の選び方という入り口時点のハードルが一番高いからだ。その原因としては自分のことは一番自分で見えない、つまり自分の「いいところ」が見つけられないことがまず挙げられる。でも最大の難関は、「何が『いい』と評価されるかわからない」点ではないだろうか。

 

その結果、相手の企業がHPの募集要項などで「コミュニケーション力の高い方」などとうたっていると、そこに飛びつき「私はコミュニケーション力に自信があります!」とオウム返しにPRしてしまう。ただし、他の何百、何千というライバルも同じことを書いて応募するものだから、お互いに目立たず自沈、人事担当者に「もうちょっと違うこと書いてよ…」と嘆かれるはめになる。

 

それを避ける方法がある。「志望動機」から先に書き始めればよいのだ。

 

例えば、文系のあなたが電器メーカーA社を希望しているとしよう。基本的には理系な会社なのだから、研究職はまあムリだろう。じゃあ、あなたが活躍できそうなフィールドはどこ?営業?事務?事務だったらどんな仕事があるの?そこであなたがやれそうな業務は何?そこの仕事で役立ちそうな自分の資質は何?そもそもなんで電器メーカー、それもA社なの?この会社、思いっきり赤字出してたのになんで興味を持ったんだろう…

 

などなど、自分と会社との「接点」からPRすべきポイントを考えていった方が、まだしも手掛かりがあるし、そもそも相手にウケル確度も上がる。

 

だから、エントリーシートは、企業ごとに書き分ける必要があるんだよ。なかでも、自己PRはある程度使い回しができるかもしれないけど、志望動機は絶対ムリ。「いいかげんなことを書いても通った」という情報を聞いたというあなた。多分その企業は、学校名しか見てないんだろう。でもこんな場合、面接ではかえって厳しいことも多いから、要注意だぞ。しっかりとPRポイントを事前に練っとかないと。