タハラ博士の「帰ってきた添削道場」 -志望動機編


ダメならイチから書き直せ!?

タハラ博士じゃ。自己PR編から読んだ人も多いんじゃないかの?でもわしのおすすめは志望動機から書くことだったんじゃ。だって「自己PR」が自身の「過去」からネタを拾うのに対し、「志望動機」は夢・希望といった「これから」を描くよな。変えられない過去よりも、「これから」を書くほうがラクじゃろ?えっ、もう志望動機を作ったと?どれ、まず目を通しててみようか。

Q 当社を志望する動機を200字程度で教えてください。

 

 

私が御社を希望するのは、「持続可能な社会への貢献」という御社の理念に強く共鳴したからです。なぜならこの理念は、これからの社会を支えるキーワードになると私は思ったからです。また説明会に出席したとき、御社の魅力をイキイキと語る若手社員の方の熱意にもひかれました。社員を成長させてくれるのは、このような企業だと強く感じました。私も入社後、持続可能な社会の実現に向けて、御社とともに成長していきたいと思います。200字)

 


 

一見、この文章はしっかりと志望動機を述べているように見える。じゃがわし的に言うと、「持続可能な社会」と「成長」と、この2つのワードで文字数を埋めとるに過ぎん。下欄で繰り返し分を青(=持続可能な社会)緑(=成長)に色分けして線を引いてみようかのう。

 

 チェック 1

 

 

私が御社を希望するのは、「持続可能な社会への貢献」という御社の理念に強く共鳴したからです。なぜならこの理念は、これからの社会を支えるキーワードになる私は思ったからです。また説明会に出席したとき、御社の魅力をイキイキと語る若手社員の方の熱意にもひかれました。社員を成長させてくれるのは、このような企業だと強く感じました私も入社後、持続可能な社会の実現に向けて、御社とともに成長していきたい思います

 


 

全体をざっと眺めると、これらと会社の理念、そして「成長する(させる)」の連呼が文の大半を占めることがよくわかるじゃろ。それと「私」と「思います」もエントリーシートではつい使いすぎる要注意語なので、取り消し線を引いてみた。

 

そこで書き直しじゃが…なんじゃと?ダメ出し受けたからとりあえず全部削除とな?そういう「1」か「0」かのデジタル的思考だと、こうしたアナログ的文章を仕上げることはおぼつかんぞ。これを考える題材として活かさんとな。じゃあ、ちょっとここで休憩して頭を冷やすかのう。


相手が知りたいことにまともに答えているか

「1日何回食事をしますか?」という質問に「朝・昼・晩です」ではちょっとズレておるのはわかるじゃろう(3回、と答えるべきじゃ)。こんなやり取りを繰り返していると、お互いの理解が噛み合わんようになってくる。相手のストライクゾーンに的確にボールを投げ返す、これができとる学生さんは案外少ないんじゃ。

 

 チェック 1修正版 取り消し線部分を削除)

 

 

私が御社を希望するのは、「持続可能な社会への貢献」という御社の理念に強く共鳴したからです。なぜならこの理念は、これからの社会を支えるキーワードになるからです。また説明会に出席したとき、御社の魅力をイキイキと語る若手社員の方の熱意にもひかれました。社員を成長させてくれるのは、このような企業だと強く感じました。入社後、持続可能な社会の実現に向けて、御社とともに成長していきたいです。(189字)

 


 

志望理由を整理して下に書きだそうか。

 

1.「持続可能な社会への貢献」という理念に共感したから

2.イキイキと語る若手職員の熱意にひかれたから 

 

…本当に、そう思っとるか?

 

まず1でいえば、「持続可能な社会」うんぬんは、ほとんどといっていほど各社パンフレット・HPで使われておるキャッチフレーズじゃ。とすれば、これをオウム返しに使った志望理由は、ほぼすべての企業に当てはまることになりかねん。つまり、どこの会社でもいいということかな?

 

2「熱意にひかれた」も同じ。これは学生さんの常套句、いわば′おあいそ’で「この企業ならでは」という理由にはなり得んじゃろう。ということは、この2つは、どの業界の、どの企業にも通用する志望理由というわけじゃよ。反対の、採用の立場になってみるがええ。そんなエントリーシートを読んで、熱意や誠意を感じるかの?

 

「当社を志望する動機を教えてください」と言われているからには、「なぜ当社なのか」をハッキリさせねばならん。つまり、どこでも通用する志望理由は、どこにも通用せんということじゃ。そのエントリーシートを落としたとき、拾って読んだ人がどこの企業に向けて書いたかわかるぐらい具体的でないと。

 

そういう意味では、1を志望動機として前面に押し出すのは難しい。また、2が本当の志望動機になっておるのなら、何を語ったとき相手がイキイキしていたのか、特にどの部分に自分は共感したのかまで踏み込んで書かんといかん。

 

ただ、この2の「雰囲気に共感」レベルだけでは志望動機を作るのは難しい。相手が聞きたいことの柱はほかにあるのじゃ。おっと、長くなったの、またの機会に。

 


 

自己PRの真の主役は「私はこんなヤツだ」

エントリーシートの目的は「自分という人間に興味を持ってもらうこと」だと前回確認したの。では、そもそも人事担当者に、自分はどんな人間だという印象を与えたいんじゃろ?その対象やねらいをハッキリさせたうえでちゃんと文章を書いとるかな?

 

 前回洗い出した情報を、とりあえず文にまとめてみようか。


「学生時代に力を入れたこと」書き直し2

 

 

学校に近いということから気軽に始めたコンビニでのアルバイトです。仕入れ、陳列、販売などを任されるうちに、専攻である経営学を実地で学んでいることに気付きました。自分でアイデアを出し、地域での売り上げが一番になったこともあり、その経験を卒論のテーマにしようと思っています。これからも笑顔で接客を続けていきます。(153字)



 

昔、オモシロい経験をしたことがあっての。わしが一生懸命自己PRを添削しとるところに小学生の孫娘がきて、これと同じようなことを書いた学生さんの文章を読んで言ったんじゃ。

 

おじいちゃん、この人、このコンビニに就職するの?

 

…なんでそうなったかわかるか?そう、「誰に向けて‘私はこんなヤツだ’と訴えるのか」という文章のベースがあいまいなまま、「体験」が並んでいるからじゃ。こんな場合、自分が思ってもみなかった印象を相手に与えてしまうことがよく起こる。笑い声が聞こえるの。でも自分も同じようなことをやっとるかもしれんぞ。

 

そもそもどんな自分を相手に伝えたいのかな?ん?「『とことんやる人間』とアピールしたい」じゃと?…でも、ちょっとずれとりゃせんかのう…。上の文だけだと「とことん=つきつめて、徹底的に」といった部分は見えんな。そもそもお前さんは、どんなことに対して「とことんやる」んかの?

 

どんな場面で「とことん」スイッチが入るのかは人それぞれじゃ。そして、そこにその人の固有のものの見方や考え方が現れる。いわゆる価値観、というやつじゃ。質問「学生時代に力を入れたこと」は、各人のとことんスイッチのありどころ=価値観・ポリシーを聞かれていると考えてよい。だからどんなことに対して「とことんやる」のかも、相手に見えるように説明せんといかん。

 

今回の教訓といこうか。「たとえ質問が『一番力を入れたこと』でも、できごとの羅列になったらダメ。「自分はこんな人間だ」というベースが必要だ。出来事は、それをいうためのbecause(なぜならば)の役割にすぎないのだから」。

 

では改めて聞くが、上のアルバイト体験をもとに自己PR文を書き直すとすれば、おまえさんはどんな「自分」を軸にアピールしたいかの?次回の宿題じゃ。

 


どんな自分をPR(強調)するか?

人間は十人十色。同じ経験をしても感じ方や得たものは異なる。同じアルバイト体験でも、PR(強調)したいポイントが違うと文章はどう変わるかの?実際に書きながら考えてみような。

 

● 力を入れたこと=学業をアルバイトに活かした→勉強熱心な学生だよ


 

コンビニ店でのアルバイトです。仕入れ、陳列、販売などを任されるうちに、専攻である経営学の考え方が活かせることに気付きました。販売のアイデアが当たってその店の地域での売り上げが一番になったこともあり、紙の上では味わえない現場の面白さを知りました。勉強に支障がない程度にという気持ちから始めましたが、ここでの経験を卒論のテーマにするつもりです。どこにでも学びの種があるということが一番の発見でした。(199字)

 

 

アルバイトを題材にしながら、アピールポイントが「学業」になっておるのがミソじゃ。ちなみに皆の文章で見かける「バイト」「コンビニ」は「アルバイト」「コンビニ店」とできるだけ略さず書いたほうがええぞ。

 

次はちょっと角度を変えて書いてみよう。

 

● 力を入れたこと=お金を稼ぐためのアルバイト→苦労を買って出るタイプの学生だよ


 

学業、クラブ活動などいろいろですが、一番にコンビニ店での深夜のアルバイトを挙げたいです。当初は○○部との両立と高めの時給だけがめあてでした。ただ年配で経営に消極的になっていたオーナーが気の毒で、アルバイトながら仕入れ、陳列と手伝ううちに、利益を上げる大変さなど世の中の仕組みを随分勉強したように思います。今秋から違うアルバイトに変わりましたが、ここでの経験をベースに卒論を書こうと考えています。(198字)

 

 

さっきの例文とアピールポイントがちょっと違うじゃろ?これだと限られた字数で「部活」もチラ見せしながら、なんでも一生懸命取り組む自分のバイタリティーをアピールすることができるぞ。

 

ちょっと変わり種でこんなのはどうじゃ?マスコミなんかには受けるかもしらん。

 

● 力を入れたこと=人間観察→ユニークなものの見方をする学生だよ


 

人間観察です。そのためサークルは○○クラブ、アルバイトは短期間でさまざまな職種をこなしてきました。中でも興味深かったのは1年間続けたコンビニ店です。いろいろな時間帯のシフトに入り、顧客層の移り変わりや購買する品目などを目を凝らして観察し続けてきました。これは単に自分の好奇心を満たすだけでなく、店の大幅な売り上げアップにも貢献しました。これからも人間ウオッチを続け、観察眼を自分と世の中に役立てたいです。(200字)

 

 

「このPR文は自分にとってはイマイチ」と感じるものもあろう。ただ、ここで言いたいのは、たとえコンビニ店という同じ題材でも、いろいろなPR文の展開ができるということ。だいたい学生のネタなんてアルバイト、サークル(クラブ)、ボランティアと底が割れとる。それをいかに他の学生と違うように見せるかが腕の見せ所なのじゃ。