「ESはPDCAサイクルで書け!」は本当か?

ES(エントリーシート)で重要なことは、自分の「ビフォー・アフター」がよく伝わる題材を選ぶことだと思っている。

 

ときどき「学生時代」を拡大解釈、高校時代以前のことを書いている人がいるけど、それは邪道だ。というか、データが古すぎる。自分の成長プロセスを相手に知ってもらうことがESのねらいのひとつなのだから、ネタは新しい方がいいに決まっている。

 

どんなことに対し、何を目的にして、どんなふうに取り組んだか。その結果、何を得て自分はどう変わったか。アルバイトでも勉強でもクラブでも、何でもいい。自分ならではの成長ストーリーがしっかり伝わることが必要なのだ。

 

ただ、気をつけてほしいのは、それをチンプな筋立てに押し込めないこと。あまたのサイトで紹介されているのが、PDCAを基に、数値を使うなどして具体的なストーリーを描きましょう、ということだが、いかがなものだろう。ちなみにPDCAとは、事業活動をスムーズに進めるための手法で、PLAN(計画)ーDO(試行)ーCHECK(検証)ーACTION(実行)のサイクルからなっている。

 

これをクラブやサークル活動に当てはめれば、だいたいこんなストーリーになる。

 

 PLAN:○○部はやる気がなかった/出席率が悪かったのでなんとかしなければならないと思った

 DO:そこで私が▲▲を試みたが、最初はうまくいかなかった

 CHECK:試行錯誤のうえ、××を思いついた

 ACTION:××を実行すると、モチベーション/出席率の向上に結び付いた

 

例えばPLAN部分が「地方あるいは全国大会入賞」で、かつあなたが部のリーダー的立場であったとすれば、「リーダーシップ」をアピールすることができるだろう。でも、「やる気がなかった/出席率が悪かった」の場合、客観的にみて、訴えに値する「成果」だろうか。また、このPDCAパターンでは、××するとうまくいった、という「ノウハウ」部分が必要以上に強調されてしまう。だが社会人に対し、サークルへの出席率アップの奥義を数値を使い披露したところで、向こうはありがたがってくれるだろうか?

 

それよりもむしろ、なぜ今まで放置されていたヤル気のなさや出席率の悪さを、自分は我慢できなかったのか、改善しようとしたか。こうした動機やきっかけとなる前半部分をていねいに描いた方が、自分らしさがより強調されるように思う。PDCAに捉われる必要はない。これはそもそも生産管理や品質管理を継続的に行なうためにとりいれられた方法なのだから。

 

カイゼン活動でも全く新しい事柄でも、人間、何か始めたり継続したりしようとするにはエネルギーが必要だ。そのエネルギーの源こそあなたらしさの正体で、そこが採用担当者の注目ポイントなのだ。だから、××が大切であることを知りました、で終わってしまうノウハウ話がESで続くと、読んでる方は正直言ってちとしんどいかな。全く何も書けないよりはずっといいんだけどね。