メラビアンの法則1

「一生懸命情報を伝えているつもりでも、相手は内容をたった7%しか聞いていないんです。そもそも人間がメッセージを受け取るのは、口調や言葉遣いなど耳からの情報が38%、態度やマナーの見た目からはなんと55%なんですよ。これは、アメリカのアルバート・メラビアン博士が発見した法則で『7-38-55のルール』といわれているんですっ」

 

とドヤ顔で語る研修講師の、「メラビアンの法則」を信じているプレゼン初心者のあなた。講師の言うことは、果たしてホントに本当なんだろうか。このブログのトピックのもう一つの柱、「論理力」の面から考えてみよう。その前に、ちょっと「論理力」のおさらい。

 

「~は正しい」を否定するとき、一番楽なやり方ははなんだったかな?。そう、反証(あてはまらない例)を挙げること。1つでも反証をあげると、その信ぴょう性は大きくぐらつく。もうひとつ、よく使われるのが「権威の借用」。要はエラい人が違うことをいっていたから、という虎の威を借る狐作戦である。

 

では具体的に、この研修講師にどや返しするのにはどうしたらいいか。まず「反証」、こんな質問はどうだろう?「内容理解が7%どまりなんですか。じゃあ、全然言葉が分かんない国に行っても、身振り手振りと声のトーンで90%以上は通じるんですね?」どや!

 

次に「権威の借用」。これは私から情報提供を。大学の図書館やオンラインの論文資料集を検索しても、「アルバート・メラビアン」なる人物の著作にはほとんどヒットしない。知り合いの心理学者と言語学者数人に聞いても、すべて「誰、それ?調べとくわ」という反応だった。つまり、セミナー業界では結構有名なこの方も、アカデミックな分野ではとんと無名なのだ。どや!

 

ということでこの「メラビアンの法則」、数字自体は全く信用できない。だいたい、どんなデータを使っているか知らんが、全部足したら100%になる、ということ自体がアヤシくないか?夏休みの理科の自由研究じゃあるまいし。

 

でも、聴衆の関心が内容以外の要素にかなり向けられる、というのは確かのようだ。いい例が裁判である。裁判員制度が始まってから、裁判所は、被告人にタダで上着を貸してくれるようになった。身なりだけで「いいかげんな奴」と判断されると公平さを欠いてしまうからだ。

 

では具体的にどう「見た目、聞いた感じ」の印象をアップするか?次回述べたい。