就職難

数年前の話である。とある企業の人事担当者から相談を受けた。ある職種で正社員の中途採用の募集を若干名行なったところ、数十名の応募があった、それはいいんですが、まあ、履歴書をいっぺん見てください、ということで早速書類に目を通させてもらった。ちょっとびっくりした。

 

地元の有名大学をでた、いわゆる高学歴者ばかりだったのだ。中には大学院卒もいる。

 

確かに人事がとまどうのもわかる。募集の職種はいわば「ガテン系」で、応募者は高卒を想定していた。事実、その職場で現在働いているのも中・高卒、専門学校卒が中心である。そんな中でうまくやっていけるのか、というのが会社側の懸念であろう。

 

自己PR欄をみても、端正な文字で紙面をきっちり埋めたものがほとんどだ。気合いがひしひしと伝わってきた。ただ目立つのは「正社員をめざしている」「安定した立場で精一杯自分の力を発揮したい」という文言だ。仕事自体への興味を志望動機としたものは皆無だ。

 

そして、職務経歴ではひとつの共通点がある。正社員としてキャリアをスタートするものの、比較的短い期間で離職、その後は契約社員として更新を重ねながら、複数の職場を渡り歩いているという点だ。あきらかに「安定」が求職のキーワードになっている。

 

日本の場合、最初の職場がその人に与える影響は非常に大きい。そこでのスタートがスムーズにきれないと、その後のキャリア、ひいては職業観に大きく響いてしまう。しかし、たった1回の「失敗(恐らく本人にとっては)」が、人生に決定的な影響力を持つのは本来あっていいことなのか。何かがおかしい、なんとかしなければいけない、と今でも思っている。