「リストラは麻薬」か

朝日新聞の連載コラム「限界にっぽん第4部・続「追い出し部屋」:5全力で支援、なんてうそだ」に目を通されただろうか。会社と就職支援会社が結託し、リストラを敢行している話だ。

 

再就職が見つかるまで支援するからーという甘い言葉をささやき、対象社員を円満退職に追い込む、ところがその後支援会社のキャリアコンサルタント(CC)から紹介されるのは希望に遠い職種・職場ばかり、という図式である。

 

まあ、私からキツイことを言わせれば、CCのウデが悪いんじゃないの、あるいは、その社員の考え方に柔軟性が足りないんじゃないの、という面もある。ただ、人事部門の幹部に抜擢されてリストラを率先して行なったという人事担当者のセリフが印象的だった。

 

「リストラは麻薬だった。一時的には人件費などの固定費が減り、業績は上がる。でも同時に優秀な人材ほど見切りをつけて流出した。残った人も勤労意欲がうせ、開発の芽が摘まれた。企業の成長力がそがれて業績はさらに悪化し、またリストラに頼る。常習性が出て来るんですよ」(そのまま抜粋)

 

4年ほど前、似たようなセリフをある機械メーカーの人事部長から聞いたことがある。

 

「リストラは切られる方も切る方も、残る方も地獄なんです。リストラされなかった人が私に言ったんですよ。『なんでリストラしたんや。同じ会社の仲間やったのに。自分らは給料半分になってもよかった、我慢できたのに』って。あれから随分年月が経ちましたが、組織が受けた傷はいえるもんではありません。いくら組織の活性化をうたっても、皆どこか疑心暗鬼なんです」

 

人材の流動性を高めるのが、今後の政府の方針だという。そのため、今後さらにCCの増産に励むらしい。

 

組織は、切れば血に出る生きものである。エライ人たちはこのことを理解したうえで政策を編んでいるんだろうか?国会議員定数削減すら、遅々として進まないのに。