いざ、死語の世界へ1 い~は 

祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり-言葉は世に連れ人につれ、あれほど流行ったコトバでも、盛者必衰の理どおり、儚(はかな)きことこそあわれなれ。彼岸のかなたに去りし語よ、帰去来兮(帰りなんいざ)-このコーナーへ。

 

イカす [動サ五]《「行かす」から》しゃれている。あかぬけして見える。「ちょっと―・したデザイン」

60年代生まれの私だが(昭和ではなく西暦)、この語の意味がわかるギリギリの世代ではないか。子どものころ、近所の本屋の店頭ラックで見かけた『平凡パンチ』(60~70年に一世を風靡した男性誌)のヘッドライン「イカしたい君へ!秋はアイビールックで決まり!」が、いまだ鮮明に頭に残っている。モデルは、今はパチンコCMで時々見かける郷ひろみだったか。

 

イケイケ [名・形動]《動詞「い(行)く」の命令形を重ねた語。》調子に乗って怖いものなしの高揚した気分を表す語。やたらに元気がいいこと。「-・ギャル」

 

80年代後半、バブル全盛期の香りをただよわせた死語である。右肩上がりでどんどん上がっていく株の相場を日経新聞が「イケイケ相場」と形容したこともあった。

 

ロン毛 [名]ロングヘア(long hair)+毛の造語。》(主に男性の)長髪のこと。

 

80年代までは、「ロン毛の彼女」など女性に対しても使っていたようだ。転じて男性に使われるようになったきっかけは、90年代初頭の人気トレンディドラマ(この言葉にも解説がいるな)「101回目のプロポーズ」にあるのではないか。主役・準主役男優が共に「ロン毛」で、一方は武田鉄也、他方が江口洋介。今は両人とも短髪で、先駆者の面影は無い。

 

ハレンチ[名・形動]破廉恥。恥を恥とも思わず平気でいること。また、そのさま。恥知らず。「―な人」「―な振る舞い」

 

カタカナ書きがポピュラーになったのは60年代後半-70年代前半に物議をかもした永井豪の漫画「ハレンチ学園」からと思われるが、先に成立していたのは漢字。しかも明治期だそうな。破廉恥罪(強姦、殺人、放火など)というリッパな法律用語もあり、漢字のほうはまだしばらくは此岸(しがん=この世)に留まりそうである。

 

 

*参考 goo辞書