The Art of Choosing

思いっきり更新をサボってしまった。3週間以上ぶりの登場なので、軽いネタで。

 

今日の標題はご存知、2010年のベストセラー、シーナ・アイエンガー教授の『選択の科学』の原書名。発刊当初から「なんでartを‘芸術’じゃなくて‘科学’としたの?」という声が多かった。私も内容からしても「科学」はないだろう、という違和感があった。

 

そして、昨夜NHK教育(Eテレと言うべきか)の「100分de名著-エーリッヒフロム『愛するということ』」を見て積年のモヤモヤが氷解した。この本の原題が『The Art of Loving』なのだ。『The Art of Choosing 』が、『The Art of Loving』のもじりであることは一目瞭然だ。おそらくアイエンガー教授は同じ国の社会心理学者である大先輩のフロムに敬意を表して、この題としたのだろう。

 

フロムの『愛するということ』のもう一つの邦題は「愛するという技術」。だから当然、アイエンガーのそれも『選択の技術』であるべきだったのだ。

 

ちなみにこの本の章立ては『And There Were None(そして誰もいなくなった)』とか『Lord of the Things(ロード・オブ・ザ・リング?)』など遊び心満載である。そこを汲まずに肝心のタイトルを「科学」としちゃあ、日本通でもある著者の遊びゴゴロが泣く。訳者に文学的な知識がなかったのかな?どうも京大時代のご学友らしいんだが。