まやかしの比較(2)
『熊本地震、農業水産被害額1千億円超。…阪神上回る』というニュースタイトルに難癖をつける一徹。いったい何が気に入らないのか!?
一徹:「よいか、アッコ。熊本県といえば、どんな名産物、食い物を連想する?」
アッコ:「なんといってもとスイカ。あと、近所からおすそわけのみかんは、確か熊本産だったわ。あとは『くまモン』じゃなくって?」
一徹:「…アッコよ、くまモンは断じて食いモンではないぞ。確かにスイカ、温州ミカンやデコポンなどのかんきつ類は、出荷量は全国一位じゃが」
アッコ:「社会の時間で、酪農も盛んだって聞いたわ」
一徹:「トマトの生産量も日本一よ。その他、主な出荷先は関西じゃが、ナス、キュウリなどの青物の生産も盛んで、全国有数の農業県なのじゃ」
アッコ:「ということは兵庫県は農業県ではないの?クワガタさんとデート…いえ、ある方にご馳走になったときのビフテキは、神戸牛と聞いたのだけど」
一徹:「兵庫県は丹波、但馬、播州、摂津の4つのパートからなっておる。神戸牛で有名な但馬は北部の地域で、地震の直接的被害はほとんど受け取らん。地震で甚大な被害を受けた、神戸を中心とする摂津地方、すなわち阪神地域は古くからの工業地帯でもあり、関西有数の住宅地でもある」
アッコ:「そうだったの」
一徹:「そもそも兵庫県全体でも、野菜・果物出荷額を合わせて500億円に満たない金額じゃ。それに対し熊本県は1400億円を超える」
アッコ:「確かに、農業が基幹産業である県と、そうでない県と農業関係の被害額を比べても意味がないわね。何を元にするか、指標の意味をはっきりさせてこそ比較の意味があるのね」
一徹:「まさにそこよ。おお、ここにある新聞の見出しも全く同じか。一体、どこのマスコミじゃ!その馬鹿げた面が見たいわ!!」
アッコ:「ごひいきのNテレビとY新聞よ。お父さん、それしか見ないじゃないの」
おわり