創発の妙味

「創発」とは性質の単純な総和にとどまらない特性が、全体として現れること。 物理学や生物学などで使われる用語「emergence」(発現)が語源で、自律的な要素が集積し組織化することにより、個々のふるまいを凌駕する高度で複雑な秩序やシステムが生じる現象あるいは状態(Wikipediaより抜粋)。

 

ということで、閉塞感あふれるわが日本社会では、「創発」が求められて久しい。新しい切り口や捉え方、活用法の創造「イノベーション」も、創発の一種に含まれるに違いない。だが、あの手この手がなかなかうまくいかない。それはなぜか。その謎を解く、目からうろこがおちるような体験を、別の角度からさせてもらった。田原真人さんによる『粘菌の活動』である。

 

詳しくは後日に譲りたいが、「創発」と混同されがちな現象として「協同作業」があるという。対比して整理すると、以下のようになる。

 

協同現象:外部に条件つけられ「最適解」や「安定状態」へ移行する現象→収束、沈滞へ

創  発:枠組みを脱出し、意味をずらしていく現象。それにより、複雑なコミュニケーションのネットワークが張り巡らされるようになる→予想不可能な、よりダイナミックで大規模な循環構造へ

 

だから、と田原さんが言うには、創発は、アタマで理解するものではなく、各自が、自らの身体を使ってカラダで納得するものだ、と。つまり報酬や地位などのアメと鞭を使った知的活動では、創発の果実は生み出すことはできないということだ。

 

創発に必要なものはただひとつ、安心安全に発言し、トライ&エラーできる環境である。すなわち経営者に必要なのは、資源を尽くしてそんな場を提供することだけだ。よく考えれば、松下幸之助氏も稲盛和夫も、経営の極意はこの一つに尽きるのではないか。なるほど。

 

やっと「人と組織のイキイキ」の正体が見えてきたような気がする。

 

田原×2は、限りなく雑談に近い対談。田原さんの創発のお役には立ってないような気がする…