温故知新

山海経(せんがいきょう)という書物をご存じだろうか。紀元前3-4世紀の中国で成立した地誌で、各地の地勢や鉱物、動植物などの産物が記されている。参考図書として必要に迫られ、いそぎA社より中古本を取り寄せたものだ。

 

手に取ってパラパラとめくると、地誌とはいえ、そこは古代、しかも白髪三千丈のお国柄。現実とはかけ離れた、キテレツな生き物がこれでもかと列挙されている。

 

左のイラストは、刑天という名の元・神様である。「形天と帝がここに至って神あらそいをし、帝はその首を斬り、これを常羊の山に葬った。そして(形天)の乳を目となし臍(へそ)をば口となし、干(たて)と戚(まさかり)をもって舞った」。要は葬られた悔しさで化け物となって抗議の舞を踊ったのか。

 

それにしても、この古本「美品、キズ、折れ、書き込みなし」の謳い文句とは違い、ページの

いたるところに傍線やチェックなどの書き込みが見られる。『強いキャラにアレンジ?』『〇〇とかぶる?』などのメモから察するに、前の持ち主はゲームのクリエーターかなんかだったのではないか。

 

無から有は生じない。目の前のウシやらやブタやらをとっくりと眺め、その機能を足したり掛けたりしても、目新しいキャラの誕生は望めない。まさに、故(ふる)きを温(たず)ねて新しきを知れば、以て師となるべし。これを実感させてくれた「美品な古本」を仲介したA社に、苦情を言うべきか感謝を表すべきか。考え中のタハラであった。