ホンマにあった怖い話

のんびり屋のお兄ちゃん、元気いっぱいのお姉ちゃんにちょっぴりはにかみ屋の妹さん。仲よしA氏一家の3人のお子さんが所属する、乗馬クラブでの出来事である。

 

A氏の日課は、子どもたちのレッスン前、騎乗予定の馬にニンジンをやることだ。その日は、お兄ちゃんと妹さんはすでに身支度を終え馬上にいた。A氏は、まだ姿を見せない中の娘のために「振り落とさないでくれよ」とワイロのニンジンを馬にやったとき、「お父さん!」、遠くから娘の声が聞こえた。顔を上げた途端、右手小指に激痛が走った。思わずしゃがみこんだ地面の先に、何かが転がったのが見えたという。それは、A氏の小指の先だった。

 

「お医者さんを!」周囲が血相を変えて走り寄ってくる。お兄ちゃんが、指を氷漬けにして病院に付き添ったらしい。失血はさほどではなかったが、担当医には「小指はねえ…。動物の歯は雑菌が多いので、接合手術はお勧めしません」と告げられた。医師であるA氏は、事態を理解し、接合を断念した。 

 

A氏は、分厚く包帯した小指を眺めながら「なんか中途半端な傷跡なんで、ここから指がニョキニョキ生えてきそうな気もするんですけどねえ」と語ってくれた。医師としてのプロの見立てである。そのうち再生するに違いない。

 

 教訓:エサやりは 必ずパーの 手でしてね(神戸市立王子動物園の注意書きより)