反エロ、反日?

ヨーロッパ行きの某中国系航空機内で映画『ボヘミアン・ラブソティ』を見た。終わって気づいたことが2つある。

まずはシンプルな表音文字がないと大変だよのう、だ。字幕に出ていた主人公フレディの名が「ドルに手ヘン、菜っぱみたいな字、由にしんにょう」の漢字3文字になってしまう。こうした類の漢字の選択は誰がするかなという、素朴な疑問も頭に浮かんだ。

次に、いくつかのシーンがカットされており、それらに2つの共通項があることだ。

ひとつはフレディが男性マネージャーにキスされたり、生涯のパートナーとなるジムの後ろ姿に一目惚れ、おもわずおいどを撫でてしまったりする場面。もうひとつは、クイーンメンバーが「東京」の名に胸を踊らせたり、羽田空港で熱狂的な歓迎を受けたりする場面である。つまり、同性愛エロと日本に関する描写である。

エロに関して言えば、社会主義大国を標榜していた80年代、その種の検閲が非常に厳しかった記憶がある。

私が通っていた大学の中国語学科では、来日する純朴な男子留学生をエロビデオとエロ本で「おもてなし」する習慣があり、彼らを大いに悦ばせたらしい。ところが、ある留学生がこれらを自ら購入、後生大事にトランクの底に忍ばせ帰国したところ、税関で発覚、大問題となったと聞く。現在もエロには厳しいのか、それとも男色のみが禁忌の対象なのか。 そして、日本の描写カットの理由について。中華人民共和国という国自体が、旧日本軍の侵攻と敗退の上に成立したことが影響しているのだろうか。

そんなことをおもいつつ、隣の中国人男性が見入っている画面に目をやると、封切られたばかりの日本映画『スマホを落としただけで』、手にしたスマホのWeChatのアイコンはあの『リーガル・ハイ』だった。人の興味は、金盾(グレート・ファイアウォール)を楽々と超えるようだ。