アナログへの誤解

「うちの会社はアナログですから」。

 

電気分野で独自技術を持つ、優良メーカーのトップからそういわれたときには、面食らった。が、次の瞬間、ああそうかと納得した。

 

アナログとはもともと「数値を、長さや角度などの連続する物理量であらわすこと」だ。水の流れに例えられる連続性は、電気の性質そのものだ。これを「アナログ」といわずしてなんといおうか。

 

とはいえアナログには、古臭い、前時代的な、なんてイメージがつきまとう。それはなぜか。

ひとつは、時代錯誤をあらわす「アナクロ」の影響だ。語感がよく似ている。

 

もうひとつは、ライバル語「デジタル」のせいだ。

 

20世紀の中ごろまでは、電圧の強弱で信号を伝えるアナログコンピューターが主流だった。その後、二進法のデジタルコンピュータが出現。時計にもこの考え方が適用され、アナログは駆逐された。ここからおそらく、前時代vs現代というイメージが生まれたのだ。

 

ただし、アナログコンピュータは今でも存在する。スケジューリングや医療用画像の解析など、多くの変数を必要とする分野は、デジタルコンピュータはむしろ苦手。最適解が決定できないらしい。そこを託すべく、現在、アナログコンピュータの開発がすすめられている。

 

そういう意味では「アナログ人間」とののしられたときには、にっこりと笑って「ありがとう」と返すべきなのだ。ただし「アナクロ野郎」に対しては、憤怒してよい。まちがえないようにね。