意識高い系と、持続可能なキャリア

大手前大学の北村先生の著書『不確実性の時代を生き抜くヒント(2022 大学教育出版)』。キャリア研究の最先端が凝縮された、とてもおもしろい本である。ただし、SDGs流行りを意識した帯風のデカ字「持続可能なキャリア」が暑苦しい(先生、ゴメンナサイ)。

 

本の内容は、転職を繰り返してキャリアアップをする人たちの、いわば「鋼のメンタル(心理的資本)」の構造を追求した内容だ。複数回の転職を経てCFO(最高財務責任者)に至った40歳以上の8名の男女を対象に、それぞれ約2時間にわたるインタビューを実施し、のべ約30万5千字にもわたる記述をM-GTA方式で概念化。キーワードを抽出している。

 

キーワードは「転職人生を生きる覚悟」「自分の売りを磨く姿勢」「成長志向」「何とかなる自信」「不確実性の中で決める力」など。私が興味をひかれたのは「不確実性の中で決める力」だ。いわゆる意識高い系と一線を画すのはこの部分だろう。

 

「転職人生を生きる覚悟」「自分の売りを磨く姿勢」「成長志向」「何とかなる自信」は、意識高い系の人々にも存在する。ただ、この本が示唆するとおり、私の知る彼女ら彼らには「不確実性の中で決める力」に必要な、ある要素が欠けている。

 

それは、自分のなかに明確な仕事観を持っていないことだ。社会のなかで自分はどう生きるか、という見極めだ。

 

だから、一流企業だとか一過性の待遇の良さとか、他人の耳目を気にしたものさしを転職先にあてはめざるをえない。自分の人生でありながら、そこで主人公を務めることが難しい人種である、ともいえる。

 

さて、キャリアアップをめざすみなさんはいかがだろうか?「不確実性の中で決める力」の正体のほか、内容が気になる方は、ぜひこの本で続きをどうぞ。