戦争と平和

たいそうなタイトルをつけてしまった。トルストイの不朽の名作のことではなく、年始のコラムに続いて、二進法のことを語りたかったのだが。

 

二進法といえば、「コンピュータ」であろう。命令に従い、0と1の入力を処理し、0と1を吐き出す機械。英国人のアラン・チューリングは、単なるハードウエアに過ぎなかったこれに「計算可能な問題は、すべて計算できる機械が存在する」という概念を編み出し(チューリングマシン)、ソフトウエアのもととなる考え方を提示した。

 

この考え方は、第二次世界大戦の英独戦で応用された。ドイツの暗号生成機’エニグマ’が発する膨大なデータ解読を、シンプルなやり方でコンピュータで解読させたのだ。

 

国と国との総力戦を通じ、コンピュータは急速に発達する。第一次世界大戦が飛行機の発展に寄与したのと、同じ構図だ。

 

一方でわが国。二進法は、なんと遊びであった。有名なもので『櫻目付字』がある。

 

三十一文字(みそひともじ)からなる和歌が、5本の桜の枝に割り付けてある。相手が思い浮かべたひとつの文字を、演者が、1~5までの枝にあるかないか、ひとつづつ問うていく。その答えを聞いて、演者がズバリその文字をあてる遊びだ。平安時代が発祥といわれる。

 

その後、江戸の太平の世で、源氏香だの魔法陣だのと組み合わされ、目付字遊びはおおいに発達した。目付字だけではなく、順列も組み合わせも、和算にかかれば遊びになる。「継子だて」「大原の花売り」などは、ストーリーとしても秀逸だ。

 

ところが、これほどまでに発達した和算も、富国強兵をめざす明治政府が、西洋数学を教育に導入してからは急激に廃れてしまった。まさに「戦争は文明を生み、平和は文化を育てる」だ。

 

*31文字と5本の枝が、どうして二進法と関係するかって?えっへん、ヒント。

二進数の11111は、十進法では、①2^4+②2^3+③2^2+④2^1+⑤2^0=31だぜい 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  櫻目付字(塵劫記)