女心と秋の空

「女心と秋の空」。秋の空の移り変わりの速さを、起伏が激しい女性の気分に例えた慣用句だ。昭和のむかしは、ちょうど今頃の季節、このフレーズで天気予報を締めくくっていたものである。

 

今だと「まァ失礼な」といっせいに柳眉を逆立てられる(←これも昭和的表現。'柳眉′がわからない人はググろう)どころか、ジェンダーバイアスの甚だしさに、SNSでフルボッコされるのは目に見えている。

 

この言葉、元をたどると「男心と秋の空」であるそうな。ただし「男心」は女心と違って「移り気」のニュアンスで使われていたようだ。そういえば江戸の俳人・小林一茶に「はづかしや おれが心と秋の空」という一句があった。いろいろな女に目移りするオレってはずかしい、という意味だ。

 

ところが時代は下って「A woman’s mind and winter wind change often.(移ろいやすきは女心と冬の風)」という英語の慣用句が我が国に伝来。それと合体し転じて「女心と秋の空」が生まれたらしい(諸説あり)。

 

そういえば「犬も歩けば棒に当たる」「情けは人の為ならず」も、今は元来とは全く違った意味が一般的になっている。女心より男心よりも、変化流転で諸行無常な言葉たちよ、まさに「言葉遣いと秋の空」である。