マルチ&カルトな最恐ビジネス

3月、別れと新たな出会いが交錯する季節だ。新入学生や新社会人諸君、渡る世間には鬼がいる。慣れない環境で、マルチ商法とカルト宗教にひっかからないように気を付けてほしい。いろいろな手口があるが、最近聞いたのはこんなパターンだった。

 

マッチングアプリで、Yと知り合った社会人のSさん。「あなたの夢は?」問われるままに、Sさんはこんなクルマが欲しい、こんな家に住みたいなど、たわいない自分語りをした。Yが楽しそうに聞いてくれるのがうれしかった。

 

そんな恋人未満の関係が数カ月にわたって続いたとき、Yから言われた。「自分が尊敬する『師匠』を紹介したい」。うさんくさい感じもしたが、過去、あやしい勧誘を論破したという自信もあった。ま、変な話がでたらすぐ帰ったらいい、と誘いに乗った。50名ぐらいの若者でにぎわう、ある金融機関が後援するセミナーだった。

 

講師として壇上に立った師匠は「雇われ人の身では『そこそこの人生』のラットレースから抜け出せない」と繰り返した。「たった一回きりの人生なのに『そこそこ』でいいのか」というフレーズがSさんの耳に残った。ビジネスオーナーになれ、と「金持ち父さん貧乏父さん」という有名な本を薦められた。

 

その数日後、Yからタワマンの最上階で開催されるパーティーに誘われた。そこで師匠と言葉を交わした。タワマンは師匠の持ち物で、芸能人も遊びに来るとのことだった。ただ、酒といえば第三のビールと缶チューハイのみ、料理は冷えた総菜とケチャップをかけた卵料理と貧相なことが少し引っかかった。

 

その後、都心の一等地にある師匠のオーガニックショップに遊びに行った。「あなたの夢を100リストアップしてほしい。それを見ながら次に話をしよう」と帰宅後、Yを通じてメッセージが届いた。

 

「夢かあ~」、自宅のベットに寝転がってSさんは天井をにらんだ。30ぐらいでネタがつきた。あと70は必要だ、ここはグーグル先生のお力を借りねば。「100,夢、リスト」と入力したところで驚いた。「マルチ、カルト」という検索ワードと紐づけられていた。

 

まさかと思い、師匠のSNSをあらためて見た。数百枚もの写真の中で、顔がまともに映っているものが一つもない。正体を隠している。ぞっとした。

 

連中は、マルチ商法で有名なA社を追放された、ある人物が創立した団体の構成員だった。名称を変えて存続し続けるため、廃絶は難しいらしい。

 

夢をエサにビジネスオーナーへの道をちらつかせ、毎月15万円の商品購入の契約を結ばせる。師匠の店舗はその商品購入のための隠れ蓑だった。自立をささやいて、家族友人から引き離し、シェアハウスと称するタコ部屋で共同生活をさせる。正体はマルチ商法だが、洗脳手法はカルト宗教と同じだ。

 

危ないところだった、とSさんは冷や汗をかいていた。みなさんも、くれぐれも気を付けてほしい。

 

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