南独・クルマ事情2 道路を走るクルマの面々

前回の「南独・クルマ事情1」の続き。
国境の街リンダウから、オーストリア経由でスイスに向かう。スイスとオーストリアの高速道路は有料なので、あらかじめ購入した年間パスをフラントガラスに貼っておく。
ドイツから出たとたん、道路のガタガタと例のあおり運転からやや解放された。国境をもうひとつ越えスイスに入ると、チェコやデンマークなど、遠方からのクルマも増えてきた。 クルマの国籍は多様だが、その7割はドイツ車である。筆頭はフォルクスワーゲン(VW:さすが「大衆の車」)で、続いてBMW、ベンツ、アウディ(これもVWグループ)の順に多い。その他で目立つのはボルボやフィアット、ヒュンダイ。日本車は全体の1割弱となかなかの健闘ぶりである。 日本車のプチ人気は、価格が安いのに加えて、マツダや三菱などを中心にディーゼルエンジンに力を入れているからだろう。そう、「環境意識の高いドイツ」圏で見かけるのは、ほぼガソリン車とディーゼル車である。電気自動車はおろか、ハイブリッドらしきクルマも目にしない。 そりゃそうだろう。2019年現在、テスラの上級車種でも、充電満タンの走行距離はたったの600キロ。バカンスにはクルマの後ろに荷物を引きずって、一日数百キロの移動をこなすドイツ圏住民のニーズに、応えられるようなパワーレベルにはない。 それでもVWやBMWなどは、2030年のディーゼル車完全禁止のシナリオをにらみ、テスラ相手に電気自動車の開発競争にしのぎを削っている。「環境意識の高いドイツ」という枕詞は、「ドイツ車ユーザーのために、われわれは環境意識を持ってクルマを開発しています」というメーカーのスローガンに過ぎないような気がする。